日本消化器内視鏡学会甲信越支部

70.下部食道噴門側胃切除術後の縫合不全に対して内視鏡的クリッピングが有効であった1例

信州大学 医学部 消化器外科
小松 大介、小出 直彦、佐近 雅宏、奥村 征大、平賀 理佐子、関野 康、石曽根 聡、宮川 眞一
信州大学 内視鏡診療部
赤松 泰次

【緒言】下部食道噴門側胃切除術後の縫合不全において内視鏡的クリッピングが有効であった症例を経験したので報告する.【症例】患者は糖尿病を有する68歳の男性.食道胃接合部のバレット食道腺癌に対して下部食道噴門側胃切除術を施行した.第5病日から縦隔内食道胃管吻合部近傍に留置したドレーンの混濁がみられた.第17病日に施行した透視で縫合不全を疑う所見を認めた.第24病日の透視で明らかな縫合不全を認めず,経口摂取を開始したが,発熱と炎症所見の増悪を認めた.第34病日の胸腹部CTで吻合部を通してドレーンの胸部食道内への迷入と左横隔膜下膿瘍が認められた.同日緊急内視鏡検査を施行した.内視鏡で観察しながらドレーンを徐々に抜去し,明らかとなった吻合部の瘻孔をクリッピングにより閉鎖した.第44病日の透視で瘻孔の閉鎖を確認し,経口摂取を再開した.経過中左横隔膜下膿瘍の再燃があったが,保存的に加療し得た.【結語】本方法は感染症状がある症例においても施行可能であり,比較的簡便であることから縫合不全難治例において有効な治療法になりうると考えられた.