日本消化器内視鏡学会甲信越支部

68.進展範囲診断にNBI拡大内視鏡が有用であった全周性Barrett食道腺癌の1例

佐久総合病院 胃腸科
松村 佳代子、小山 恒男、宮田 佳典、友利 彰寿、堀田 欣一、高橋 亜紀子、北村 陽子、篠原 知明、野村 祐介、岸埜 高明、桑山 泰治

進展範囲診断にNBI拡大内視鏡が有用であった全周性Barrett食道腺癌の1例佐久総合病院 胃腸科松村佳代子、小山恒男、宮田佳典、友利彰寿、堀田欣一、高橋亜希子、北村陽子、篠原知明、野村祐介、岸埜高明、桑山泰治Barrett食道癌はIIb進展や同時多発病変を伴っている場合が多く、進展範囲を正確に診断することが重要である。今回、側方進展範囲診断にNBI拡大内視鏡が有用で、ESDにて一括切除し得た全周性Barrett食道癌症例を経験したので報告する。【症例】50歳代、男性。【生活歴】喫煙歴 20本/日×30年、飲酒歴 0.5合/日×30年。【現病歴】上部消化管内視鏡検査(EGD)でBarrett食道癌と診断され紹介された。SCJは口側に一部舌状進展していたが、柵状血管下端からのSCJまでの距離が3cm以下であったためSSBEと診断した。SSBE内前壁から右壁にかけて境界不明瞭な発赤調の凹凸不整を認め、インジゴカルミン撒布でも境界は不明瞭であった。NBI拡大観察では、背景粘膜の表面構造は比較的整ったpitとvilli様構造が混在していたが、病変部位ではpitやvilli様構造の大小不同や融合を認め、口径不同や走行不整を呈する異常血管を認めた。程度は軽いが、これらの変化は全周性に認められ、全周性の0-IIa+IIb病変と診断した。凹凸不整が目立たないことから深達度MのBarrett食道腺癌と診断し、ESDにて一括全周切除を施行した。切除標本ではSCJが3カ所で口側に舌状進展し、BE内の前壁と後壁に発赤隆起を認めたが、側方進展範囲診断は困難であった。最終診断はAdenocarcinoma in Barrett’s esophagus,pType0-IIc,T1a-LPM,tub1,ly0,v0,HM0,VM0,90×40mm,Ae,Circで、NBI拡大観察にて診断した範囲に一致していた。【考察】通常観察では0−IIb部分の範囲診断が困難であったが、NBI拡大観察にて表面構造や血管構造の不整から進展範囲を正確に診断し得た。通常観察では色調や血管透見、粘膜模様の変化を注意深く観察し、NBI拡大内視鏡では表面構造と血管構造を詳細に観察する事が重要である。