59歳男性。黄疸と右股関節痛を主訴に当科を受診した。既往歴、家族歴に特記事項なし。内服薬はなく、アルコールは機会飲酒であった。身体所見では全身に黄染あり、弾性軟の肝を右肋弓下に3横指触知した。WBC 3100/μl,Hb 11.3g/dl,Plt 21.9万/μl,TP 6.8g/dl,Alb 4.2g/dl,T-Bil 6.1mg/dl,D-Bil 4.2mg/dl,ALP 1173IU/l,γ-GTP 387IU/l,LDH 172IU/l,AST 190IU/l,ALT 182IU/l,Amylase 75IU/l,CRP 0.10mg/dl, PT% 67.4%,HBsAg(-),HCVAb(-),ANA陰性,AFP 1.6ng/mlであったがPSA 10158ng/mlと高値であったので前立腺癌を疑い検査したところ、前立腺に径24mmの腫瘤と内腸骨領域にリンパ節腫大、骨シンチで全身に強い異常集積を認め、前立腺癌のリンパ節転移、多発骨転移(T3bN1M1b)と診断した。一方、肝腫瘍や胆管閉塞は認めず、閉塞性黄疸を含めた黄疸の原因は明らかではなかった。T-Bilは19mg/dlまで上昇したが、除睾術後に黄疸は次第に軽快した。黄疸の原因は前立腺癌に伴う腫瘍随伴症候群と考えられた。肝生検では肝内胆汁うっ滞の所見であった。腫瘍随伴症候群は悪性腫瘍に伴い内分泌異常、神経学的異常、皮膚病変、凝固異常等、多彩な病態をきたすことが知られているが、そのメカニズムは不明な点が多い。悪性リンパ腫や腎癌を基礎疾患とした腫瘍随伴症候群による黄疸例の報告が散見されるが、前立腺癌に伴う症例は非常に稀であり報告する。