【症例】79歳、男性。
【既往歴】特記事項なし。輸血歴なし。飲酒:1合/日、20歳〜74歳。喫煙:20本/日、20歳〜74歳。最近前立腺癌疑いで近医にて精査中。
【現病歴】平成15年近医にて左耳下腺癌手術(粘表皮癌)を施行。平成16年よりは当院耳鼻科で継続観察しているが局所再発なし。平成20年11月採血にて肝胆道系酵素の上昇を認めたため当科紹介。腹部CTにて肝左葉に約12cmの分葉状巨大腫瘍を認め精査目的で入院となった。
【現症】結膜貧血なし、黄疸なし。表在リンパ節触知せず。胸部正常。右李肋部に腫瘤を触知、弾性硬、表面不整、圧痛なし。他は腹部異常なし。下腿浮腫なし。神経学的異常所見なし。
【検査所見】TP 8.0 g/dl、Alb 4.0 g/dl、GOT 19 IU/l、GPT 11 IU/l、LDH 165 IU/l、ALP 570 IU/l、γGTP 165 IU/l、T-Bil 0.5 mg/dl、WBC 5890 /μl、RBC 365万 /μl、Hb 12.0 g/dl、Hct 36.9 %、Plt 43.2 万/μl、CRP 5.5 mg/dl、CEA 3.5 ng/ml、CA19-9 23 U/ml、AFP 4.3 ng/ml、PIVKAII 55 mIU/ml、ProGRP 5.0 pg/ml、NSE 5.5 ng/ml、PSA 23.75 ng/ml、HBsAg(-)、HCVAb(-)。
【経過】肝腫瘤は、CT単純にて低濃度、腫瘤中心部は壊死像を呈し、造影早期に腫瘤辺縁優位に増強効果を認め、造影後期には周囲肝より低濃度を呈した。癌臍や被膜の描出がなく、胆管細胞癌や肝細胞癌としては非典型的であった。MRIではT1強調像にて不均一な低信号、T2強調像にて高信号を呈し、SPIO の取込みはなかった。画像上カルチノイドや神経内分泌腫瘍も否定できず、肝腫瘍生検を施行した結果、耳下腺癌転移の可能性が高いとの診断を得た。平成21年1月、尾状葉+肝左葉切除術を施行したが、切除組織病理結果も耳下腺癌肝転移に合致していた。
【考案】今回我々は、耳下腺癌術後6年目に肝転移が発見され、肝生検にて診断し得た症例を経験した。局所再発はなく、稀な症例と考えられ報告する。