日本消化器内視鏡学会甲信越支部

63.エコー下肝生検にて診断した胸膜中皮腫肝転移の一例

済生会新潟第二病院 消化器科
窪田 智之、石川 達、樋口 和男、関 慶一、太田 宏信、吉田 俊明、上村 朝輝
済生会新潟第二病院 呼吸器科
成田 淳一
済生会新潟第二病院 病理科
石原 法子

【症例】60歳代 男性 【職業歴】元事務職 【現病歴】2003年9月 右胸痛を主訴に初診。極少量の右胸水を指摘されたが、経過観察となった。2004年1月 胸水が増量し、細胞診にて腺癌あるいは中皮腫の疑いであったが確定には至らなかった。肺内に腫瘤性病変は無く、全身検索でも原発となりうる病巣は指摘できず。胸膜癒着療法を施行し、以後呼吸器外来にて経過観察された。2006年4月 胸部CTにて右上葉に陰影と肝外側区域に低濃度腫瘤が疑われた。2006年10月 CTにて肝に多発する低濃度腫瘤を認め、当科紹介となった。【検査結果】血液・生化学所見に異常なし。AFP・CEA・CA19-9・SLX 正常範囲。HBs抗原陰性、HCV抗体陰性。腹部エコー:比較的境界明瞭な低輝度腫瘤。エコー下肝生検:紡錐形から一部上皮様の腫瘍細胞が索状に線維形成を伴い、増生していた。核分裂像も散見された。免疫組織染色検査ではcalretinin陽性、D2-40陽性、WT-1陽性、CAM5.2陽性、cytokeratin(AE1/AE3)陽性、SMA陰性、c-kit陰性、vimentin弱陽性であった。i病理像から上皮型、肉腫型成分が混在した二相型中皮腫と診断した。【臨床経過】診断後、呼吸器科においてgemcitabine,cisplatin+pemetrexedで加療されたが、2007年11月現病死された。【結論】今回我々は、エコー下肝腫瘍生検で診断を確定しえた胸膜中皮腫の症例を経験した。胸膜中皮腫はアスベスト暴露を背景に、近年増加傾向である。進展形式は原発巣からの直接浸潤が主であり、遠隔転移は稀とされている。ただし今後、生存期間の延長や剖検による病態の解明に伴い、高頻度に認められるようになるとの報告もある。本症は原発からの直接浸潤の形跡はなく、血行性に肝転移した経過をとらえた貴重な症例と考え、報告する。