日本消化器内視鏡学会甲信越支部

60.肝予備能不良肝癌症例に対する経橈骨動脈法TACEの安全性について

厚生連長岡中央綜合病院 消化器病センター 内科
渡辺 庄治、佐藤 知巳、佐藤 明人、福原 康夫、富所 隆、吉川 明

【目的】【方法】経大腿動脈血管造影法(transfemoral angiography , TFA)は腹部血管造影検査や、肝動注化学塞栓療法の手技として広く行われている。しかし、検査中、検査後の長時間にわたり下肢伸展した状態での可動制限を強いることが難点である。われわれは経橈骨動脈腹部血管造影法(transradial angiography, TRA)を導入、術後の可動制限を極力改善した。方法は、患者の左橈骨動脈にSeldinger法にて4Fr.のシースを挿入し、検査治療後はシースの抜去と同時に止血バンドで3時間圧迫止血後解除した。なお、検査後は圧迫止血中も含めて行動制限を行わなかった。TRAの利点は 1)橈骨動脈周囲には主要な神経が解剖学的に走行しておらず、安全に穿刺できること、2)術後に穿刺部からの出血による合併症が稀であることが挙げられる。本法により患者は長時間の臥床から開放され、術後自力で飲水、食事が可能であり、QOL面でTFA法に比し明らかに優れている。【結論】TRA法は、肝予備能不良例、腹部疾患領域において可動制限を苦痛とする患者に対して、有効なアプローチになりうることが示唆された。