日本消化器内視鏡学会甲信越支部

56.C型慢性肝炎に対するインターフェロン治療著効11年3ヵ月後に肝細胞癌を発症した1例

山梨大学 医学部 第一内科
(研)川上 智、雨宮 史武、北村 敬利、進藤 邦明、植竹 智義、井上 泰輔、坂本 穣、前川 伸哉、岡田 俊一、榎本 信幸

近年、C型慢性肝炎に対するインターフェロン(IFN)投与後の完全著効(SVR)例からの肝細胞癌(HCC)発生例の報告が散見され、SVR例に対しても継続的な経過観察が重要とされている。今回、SVR後10年以上経ってからHCCを発症した1例を経験したので報告する。<症例>HCC発症時79歳、女性、輸血歴あり。検診で肝機能異常を指摘され当科を受診しC型慢性肝炎と診断され、IFN治療目的で1997年12月に入院となった。入院時Plt 7.6万、AST 109 IU/l、ALT 106 IU/l、ALP 233 IU/l、serogroup 2、HCV RNA量 5.6 kilocopies/ml、AFP 258ng/ml (L3分画4.8%)、肝組織像F4/A2、CTでHCCを認めなかった。同月よりHLBI 6MUを24週間投与され、1998年6月に治療は終了しHCV-RNAは陰性化した。治療後は定期的に近医を受診しており、HCV-RNAは陰性化を持続し、トランスアミナーゼおよびAFPも正常化していた。2005年5月に行った肝生検ではF4/A1であった。しかしIFN治療終了から11年3ヵ月後の2009年9月のCTで肝S3に20mmの動脈相で濃染し遅延相で染まりぬける結節を認め、HCCの発症を疑われ当科に入院となった。入院時検査所見は、身長138cm、体重 47.1Kg、BMI 24.7、Plt 7.7万、AST 27 IU/l、ALT 19 IU/l、ALP 177 IU/l、T.Bil 1.3 mg/dl、Alb 3.4 g/dl、PT 87.0%、ICG R15 25.6%、ANA陰性、FBS 77、HbA1C 4.8、HOMA-IR 1.94であった。腫瘍マーカーはAFP 82.3 (L3分画 5.4%)、PIVKA-2 11、CEA 4.1、ウイルスマーカー はHBsAg(-)、HBsAb(+)、HBcAb 41.1%、HCV TaqManPCR 検出感度以下であった。HCCは末梢のB3が拡張し胆管浸潤を伴っていると考えられ、手術予定である。IFN治療著効時におけるHCC発症のriskとしてはIFN治療開始時にF3またはF4であることが報告されている。本症例もIFN治療開始時F4であり、またHBsAbも陽性でHBV既感染も発癌に関与した可能性もある。IFN治療時に肝線維化が進行していた例、HBsAb、HBcAb陽性例は著効後10年が経過しても定期的な経過観察が必要であると考えられた。