日本消化器内視鏡学会甲信越支部

52.肝内多発シャントを有する、Osler-Weber-Rendu病の1例

潟大学 大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野
堂森 浩二、高野 明人、水野 研一、佐藤 明人、五十嵐 正人、小林 正明、野本 実、青柳 豊
済生会三条病院 内科
瀧本 光弘

【はじめに】Osler-Weber-Rendu病は全身の血管形成異常(肺、肝、脳など)と習慣性出血、粘膜や皮膚の血管拡張症を特徴とする常染色体優性遺伝性疾患である。腹部血管造影にて特徴的な画像所見を呈したOsler-Weber-Rendu病の1例を経験したので報告する。【症例】54歳、女性【現病歴】2008年、健診異常を契機に近医で精査を受け、腹部CTで肝腫瘤性病変を疑われた。同院にて行われた腹部dynamic CT、MRIでは腫瘍性病変を否定できない所見であり、肝生検が施行されるも確定診断には至らなかった。2009年3月、当科に紹介され、精査目的に入院した。血液検査上、貧血はなく、肝炎ウイルスや各種自己抗体検査も陰性で異常所見を認めなかった。腹部dynamic CTでは、肝全体に動脈血、門脈血の分布異常を認めた。更に一部で結節状に動脈相で濃染される病変を認めたが、平衡相ではwash outされなかった。またプリモビスト造影MRIの肝細胞相とソナゾイド造影USのKupffer phaseのいずれでもdefectとはならず悪性腫瘍は否定的であった。血管造影では、肝内にtumor stainを認めず、全肝に渡りA-P、A-V、P-Vシャントが多発していたが、肝静脈楔入圧は正常であった。Osler-Weber-Rendu病の肝病変を疑い、詳細な家族歴・鼻出血の既往歴聴取にて確定診断に至った。その後施行した上部消化管内視鏡検査では、十二指腸を中心に小さなvascular ectasiaを認めたが、胃・食道静脈瘤は認めなかった。【考察】Osler-Weber-Rendu病の肝血流異常は多くの場合門脈圧亢進症を合併し、難治性腹水や食道静脈瘤からの出血が問題となる報告が少なくない。これに対し本症例では、P-Vシャントの存在が門脈圧上昇を防いでいると推察され、門脈圧亢進の所見は認めなかった。示唆に富む症例と考え報告する。