日本消化器内視鏡学会甲信越支部

48.経胃的膵嚢胞ドレナージ術後に発症し、保存的治療で軽快した門脈ガス血症の2例

新潟市民病院 消化器科
河久 順志、古川 浩一、五十嵐 健太郎、林 雅博、濱 勇、相場 恒男、米山 靖、和栗 暢生、杉村 一仁、月岡 恵

【症例1】40歳代、女性。重症急性膵炎にて当科搬送、大量輸液、動注療法、人工呼吸管理を実施し、膵炎は収束。膵嚢胞の出現を認め、外来で経過観察していたが、9か月経過後も消失せず、CT上の縮小はわずかであり膵嚢胞ドレナージ術目的に再入院。超音波内視鏡ガイド下に嚢胞穿刺、ガイドワイヤーを留置。拡張を試みるも、ガイドワイヤーの脱落を繰り返し、内容吸引のみにて治療を断念。直後にCTにて、肝内門脈にガス所見を認めた。自他覚症状なく、抗生剤投与のみで保存的に観察。翌々日のCTにて門脈ガス像の自然消失が確認された。【症例2】50歳代、男性。重症急性膵炎、感染性膵嚢胞にて当科転院。大量輸液、動注療法にて膵炎、感染徴候は沈静化した。退院後、外来経過観察中に膵嚢胞の増大、腹部圧迫症状を認め膵嚢胞ドレナージ術目的に再入院。MRIにて嚢胞は単房性で、ERCPにて膵管と嚢胞に交通を認めないことから、経胃膵嚢胞ドレナージ術を選択。超音波内視鏡ガイド下に嚢胞穿刺、ガイドワイヤーを留置。拡張の後にチューブ留置を試みるも難渋し、治療を中断。腹腔内の遊離ガス像や嚢胞液の漏出を確認のため直後にCTを撮影し、脾静脈、門脈内にガスが確認された。臨床症状なく、血行動態も安定し、血液検査でも有意な所見ないため、抗生剤投与のみで保存的治療の方針とした。翌日のCTで門脈ガス像の自然消失が確認された。【考察】門脈ガス血症は、腸管壊死などの重篤な病態に合併することが知られている。しかし、近年CTなどの画像診断技術の向上により、腸管壊死を伴わない軽症例の報告もあり、その中には、上部消化管の内視鏡処置後の門脈ガス血症の報告も散見されている。本症例も腸管壊死による発生とはいえず、成因を考える上では示唆に富む症例と考えられた。