症例は70歳代の女性。飲酒歴はない。2003年9月に前医にて閉塞性黄疸を契機に十二指腸乳頭部癌と診断され、10月に膵頭十二指腸切除が施行された。2004年3月に肝転移が出現し左葉切除が施行された。その後、再発は認めなかったが、2005年6月に急性膵炎を初発。保存的に改善したが、2007年9月と2008年1月にも重症急性膵炎を発症した。繰り返す急性膵炎の原因精査のため当科を紹介受診した。5月に入院。CTにて残膵の膵管拡張を認めていたことから、膵管空腸吻合部狭窄が第一に考えられた。まず、SIF-Q260を用いて膵管空腸吻合部評価を試みた。輸入脚盲端までの挿入には成功したものの、吻合部は同定困難であった。CTを再検し、前額断にて膵管の走行を検討したところ、吻合部は盲端側に向けて開口しており、輸入脚内での反転観察が必要と考えられた。そこで、SIF-Q260を挿入後にオーバーチューブを残したままスコープを抜去。オーバーチューブに側孔を作成してXP-260Nに交換し観察を試みた。輸入脚内での反転観察が可能となり、pin-hole状に狭窄した吻合部が確認された。XP-260N を用いて5Fr膵管ステントの留置に成功し手技を終了した。約2日で膵管ステントは自然逸脱したが、CTにて膵管拡張は軽快しており、ブジー効果が得られていると考え経過観察の方針とした。
10ヶ月後の2009年3月に再び急性膵炎を発症。吻合部の再狭窄と考え、再びSIF-Q260とXP-260Nを用いて、5Fr膵管ステントの再留置を行った。ステントの逸脱はなく、膵炎再燃もみられていない。
これまで当科ではSIF-Q260を用いてオーバーチューブを留置した後、XP-260Nを併用し、膵管鏡や総胆管結石の截石術に応用してきた。この手技は本症例のような術後症例にも応用できる有用な手技と考えられ報告する。