超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診(EUS-FNA)はその有用性が認知され、徐々に広がりを見せているが、超音波内視鏡下の膵・胆管ドレナージ、膵嚢胞ドレナージ、腹腔神経節ブロックなどのTherapeutic EUSは施行している施設も限られており、使用するデバイスや実際の手技に関しても各施設で試行錯誤されているのが現状と思われる。 今回我々は出血性胃潰瘍による2回の緊急手術の結果膵管損傷を来たし、膵管空腸吻合術を行ったものの、吻合部狭窄による急性膵炎を繰り返す症例に対しEUS-PDを試みた。 出血性胃潰瘍にて幽門側胃切除、B-II再建が行われており残胃からの観察で、約4mmに拡張した膵体部の膵管が描出された。19G穿刺針(EchoTip Ultra)にて穿刺を行ったが、なかなか膵管に穿刺することができず難渋した。穿刺後は造影、0.025インチ ガイドワイヤーの留置はスムーズであったが、7Frダイレーターによる拡張がでなかった。ガイドワイヤーを残したまま先端フードをつけた直視鏡に入れ替えて再度ダイレーションを試みたが不成功であった。施行中徐々に胃と膵臓が離れ、胃壁の穿刺部分も広がり、透視にて膵管外への造影剤の漏出も認めたため手技を断念した。 EUS-PDが不成功に終わった理由としては、繰り返す膵炎により膵の線維化が高度で穿刺、拡張が難しかったこと、胃と膵臓の癒着が十分でなかったことなどが考えられた。 手技は不成功に終わったが、膵管への超音波内視鏡下治療の応用といった適応の問題、治療手技や使用デバイスなど今後広がるであろう超音波内視鏡下治療を考える上で参考となることも多いと思われ、今回の反省点も含め報告する。