日本消化器内視鏡学会甲信越支部

41.MEN-1型に合併した多発性十二指腸および膵内分泌腫瘍の1例

山梨大学 第一内科
深澤 光晴、高野 伸一、今井 佑樹、広瀬 純穂、大塚 博之、大高 雅彦、佐藤 公、榎本 信幸
山梨大学 第一外科
川井田 博充、板倉 淳、藤井 秀樹

症例は73歳女性。2001年に副甲状腺機能亢進症で3腺を摘出。この時に下垂体腺腫を指摘された。副甲状腺腫に家族集積を認め家族性MEN 1型と診断、当院内分泌科でfollow upされていた。2009年2月の血液検査でガストリン高値(230 pg/dl)を認め、腹部超音波検査を施行、膵体部に11mm大の低エコー腫瘤を認めた。MEN 1型に合併した膵内分泌腫瘍の疑いで当科に紹介入院となった。グルカゴン、インスリンは正常、耐糖能異常を認めず、腫瘍マーカーは陰性であった。腹部CTでは、膵体部に10mm大の腫瘤を認め、動脈相では腫瘤辺縁がリング状に濃染し、平衡相では腫瘤全体の染影を認めた。MRIでは、同病変はT1強調画像でlow intensity, T2強調画像でhigh intensityを示し、MRCPでは主膵管に異常を認めなかった。Dynamic MRIではCTと同様の血行動態を示した。拡散強調画像では病変は指摘できなかった。EOBでは門脈背側のS6/7に3mm大のdefectを認め、転移の可能性が否定できないが微小病変のため質的診断は困難であった。上部消化管内視鏡検査では、十二指腸球部から下行脚に3-8mm大の粘膜下腫瘍を複数認めた。胃十二指腸に潰瘍性病変は認めなかった。粘膜下腫瘍対してBoring biopsyを施行したところ、粘膜筋板下に小型円形細胞の策状構造がみられた。免疫染色では、Chromogranin A、Synaptophysin、Gastrin陽性であり、ガストリノーマと診断した。EUSでは、十二指腸球部の粘膜下層に境界明瞭な低エコー腫瘤を複数認め、また膵体部に境界不明瞭で内部が不均一な類円形の腫瘤像を認め、一部に無エコーな部分もみられた。腹部血管造影では下膵十二腸動脈末梢に濃染像を認めた。選択的動脈刺激静脈サンプリング(ASVS)を施行し、胃十二指腸動脈からの刺激で30秒後にガストリンの上昇(1600 pg/dl)を認めた。脾動脈、固有肝動脈、下膵十二指腸動脈からの刺激では反応がみられず、膵病変は非機能性が疑われた。肝病変はMRI(EOB)以外の検査では明らかではなく、膵および十二指腸内分泌腫瘍に対して膵頭十二指腸切除術の方針となった。病理結果とともに文献的考察を加え報告する。