日本消化器内視鏡学会甲信越支部

40.膵管内乳頭粘液性腫瘍との鑑別が困難であった膵管内管状腫瘍の1例

飯田市立病院 消化器内科
塚原 孝典、岡庭 信司、持塚 章芳、金子 靖典、中村 喜行
飯田市立病院 総合内科
白籏 久美子
飯田市立病院 消化器外科
金子 源吾
飯田市立病院 臨床病理科
伊藤 信夫
飯田病院 内科
原 栄志

症例は70代男性。胃十二指腸潰瘍にて手術歴あり。6年前より膵管拡張を指摘され慢性膵炎として経過観察中であった。3月に残胃の出血性胃潰瘍にて入院した際に施行したCTにて体尾部主膵管の拡張と乳頭状腫瘍を指摘され精査目的に紹介となった。腹部USでは拡張した体尾部主膵管内に高エコーの乳頭状腫瘍を認めた。EUSにて体尾部の乳頭状腫瘍は主膵管内にとどまっており明らかな膵実質浸潤は認めなかった。MRIでもび慢性に拡張した主膵管と体部に充実性腫瘍を認めたが明らかな転移は認めなかった。内視鏡像では乳頭の開口部開大と粘液の排出があり、主膵管内にも粘液の貯留を認めた。切除範囲決定のために施行したIDUSでは乳頭状腫瘍はSMVの左側にとどまっていた。以上より浸潤を伴わない主膵管型膵管内乳頭粘液性腫瘍と術前診断し、膵体尾部脾摘出術を施行した。肉眼的には主膵管内の広基性隆起性病変で、組織学的には腸型、胃型、膵管型上皮類似の腫瘍細胞が管腔構造を示しながら増殖しており膵管内管状腫瘍と診断した。膵管内管状腫瘍は非粘液性の腫瘍細胞であることが多く膵管拡張も限局性とされており、本例では膵管内乳頭粘液性腫瘍との鑑別診断が困難であった。