膵菅ステントは、通常胆管ステントに比し開存期間が短い。原因として膵液流量が少ない事に加え、腸液の逆流があげられる。今回、我々は膵体部癌に伴う感染性膵嚢胞症例に対し、腸液の逆流防止の目的にステントの乳頭側を十二指腸内にださずに膵管内に入れ込んで留置するインサイドステントを使用し、3ヶ月後も開存していた症例を経験したので報告する。症例:68歳・男性。現病歴:平成21年2月中旬頃より左上腹部痛を自覚し、近医にてNSAIDs内服で症状は消失したが、3月末より再度腹痛が出現し当科紹介となった。各種画像検査にて膵体部主膵管の狭窄とその尾側膵管の拡張、膵体尾部と胃の間に周囲脂肪織濃度上昇を伴う径65×75mmの嚢胞性病変を認めた。CRP 40.0 mg/dlと高度の炎症反応を認め、感染性膵嚢胞と診断。ドレナージ法として嚢胞と膵管が交通している可能性が高く、主膵管狭窄部の質的診断もかね,経乳頭的アプローチを選択した。Billroth-I法再建胃であり、主乳頭からのアプローチは困難であった為、副乳頭より狭窄部尾側膵管へ経鼻膵管ドレナージチューブ(5Fr)を留置。膵液細胞診にて腺癌を認めた。5月嚢胞は縮小し、炎症反応の消退を認めたが、大網沿いに複数の腫瘤形成が出現、増大しており、膵液の腹腔内への漏れに伴う腹膜播種を生じている可能性があり、切除術をせずに化学療法(GEM)を開始した。6月初旬に膵管インサイドステント(カテックス社製・CX-Tステント・片フラップ・6Fr 7cm・側孔 23個)を留置し退院となった。ステントは内視鏡的に抜去できるようにステントの乳頭側にナイロン糸をつけ十二指腸内に糸を出して留置した。7月中旬膵嚢胞に加え大網沿いの腫瘤も消失。他、遠隔転移の所見も認めず、9月膵体尾部脾切除術、残胃全摘、胆嚢摘除術を施行した。病理組織学的に膵体部の15mm大の通常型膵癌と診断。肉眼、洗浄細胞診ともに播種を疑う所見は認めなかった。手術時まで尾側膵管の拡張や嚢胞再発は認めず、留置した膵管ステントは開存したものと思われた。症例は限られるが抜去可能な位置で有れば膵管インサイドステントは長期留置できる可能性がある。