日本消化器内視鏡学会甲信越支部

37.腹腔鏡下胆嚢摘出時に使用した金属クリップの脱落経過を追えた1例

飯田市立病院 内科
原 亮祐、金子 靖典、岡庭 信司、持塚 章芳、白籏 久美子、中村 喜行
飯田市立病院 外科
秋田 倫幸、平栗 学、堀米 直人、金子 源吾
飯田市立病院 臨床病理科
伊藤 信夫

症例は70代男性.2007年12月に胆嚢炎に対して腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し,術中に胆嚢管,胆嚢動脈にそれぞれ二重に金属クリップをかけて切断した.2008年5月,総胆管結石を発症したためESTを行い結石を除去した.この時点の腹部CTでは腹腔鏡下胆嚢摘出時に使用した金属クリップは4つ確認できていたが,同年8月の腹部CTでは3つしか確認できなかった.2009年6月に腹痛,発熱,黄疸にて受診し,腹部CTにて金属クリップの総胆管内への脱落迷入を疑われた.緊急ERCPにて下部胆管内に金属クリップと思われる異物を内包する16mm×8mm大の透亮像を認めたため、閉塞性胆管炎の治療目的にEBDを留置した.胆管炎の症状が落ち着いた後EPBDを施行し,バスケット鉗子にて結石様の異物を一括摘出した.異物は金属クリップの周囲に胆汁成分が層状構造をなしており肉芽組織は認めなかった.本例では胆嚢管断端の処理に使用した2つの金属クリップが,1つは胆管から自然排泄され,もう1つは核となり胆管結石を形成したと考えられた.