日本消化器内視鏡学会甲信越支部

36.肝円索膿瘍の形成に急性閉塞性化膿性胆管炎と門脈血栓の関与が疑われた一例

信州大学 医学部 消化器内科
丸山 雅史、張 淑美、児玉 亮、尾崎 弥生、高山 真理、浜野 英明、新倉 則和、田中 榮司

肝円索膿瘍の形成に急性閉塞性化膿性胆管炎と門脈血栓の関与が疑われた症例を経験した。症例は63歳男性。以前から胆嚢結石を指摘されていた。心窩部痛、悪寒、発熱を主訴に当科を紹介受診した。血液検査で肝胆道系酵素の上昇とDICを認め、腹部CTにて胆嚢結石と門脈左枝に血栓を認めた。急性閉塞性化膿性胆管炎と診断し、ただちにERCPを施行した。胆管結石は認めなかったが、膿性胆汁と乳頭炎によると考えられる下部胆管の狭小化を認め、tube stent を留置し、胆管炎及びDICは保存的に改善した。また、門脈血栓に対しては第6病日よりウロキナーゼを投与し、第16病日のCTにて門脈血栓は改善していたが、入院時にはっきりしなかった肝円索膿瘍を認めた。炎症反応は改善していたため第20病日退院し、第35病日のCTでは肝円索膿瘍も縮小していた。肝円索膿瘍はそれ自体が急性腹症を呈する疾患であるが、症例数は少なく、また本症例では急性閉塞性化膿性胆管炎に起因すると思われる門脈血栓が肝円索膿瘍の形成に関与したと考えられ、非常にまれな症例と考えられたため報告する。