日本消化器内視鏡学会甲信越支部

35.膵胆管分離開口(重複乳頭)に合併した乳頭部癌の1例

厚生連糸魚川総合病院
金山 雅美、野々目 和信、吉田 啓紀、月城 孝志

症例は81歳女性。2003年に膀胱癌で膀胱、右腎尿管全摘出術、左尿管皮膚瘻造設術を施行。術後、胆嚢炎となり、胆嚢摘出術、総胆管切開採石術を施行した既往あり。2008年11月、便秘で内科通院中、CTで高度の総胆管拡張を認めたため1回目入院。上部消化管内視鏡で、主乳頭は憩室内に位置し、発赤調の隆起性病変を認めた。病理組織で高分化型腺癌を認め、乳頭部癌と診断した。1回目のERCPで、拡張した主膵管は造影されたが、胆管は造影されなかった。手術や内視鏡的切除は希望されず、S1(80mg/day)開始し外来治療となった。2クール終了後の病理組織で悪性所見は認めず、5クール終了後の2009年8月に食欲低下、心窩部痛が出現し、閉塞性黄疸の診断で2回目入院となった。2回目のERCPで、主乳頭の隆起性病変は消失し主膵管の拡張は改善していた。前回は食物残渣で見えなかったが、主乳頭の口側に別の開口部を認めた。そこからカニュレーションすると胆管が造影され、膵胆管分離開口(重複乳頭)と判断した。拡張した総胆管に数mmの結石を複数認め、閉塞性黄疸の原因は総胆管結石によると考えEPBDを施行し排石した。以降、症状なく外来で経過観察している。

膵胆管分離開口はまれな開口形式であり、乳頭部癌を合併した1例を経験したので文献的考察を含めて報告する。