日本消化器内視鏡学会甲信越支部

34.胆嚢捻転症の1例

長野県立木曽病院 外科
福家 知則、大橋 伸朗、小山 佳紀、久米田 茂喜
長野県立木曽病院 内科
渡邉 貴之、奥原 禎久、北原 桂、飯嶌 章博
信州大学 病理
下条 久志

症例は83歳の女性。嘔気および食欲不振を主訴に当院を受診し、本人希望で同日入院となった。入院時身体所見は胸腹部正常であったが、第2病日目に腹部全体に圧痛を認め、筋性防御も軽度認めた。血液検査では第1病日目明らかな異常は認めなかったが、第2病日目に白血球数増多と炎症反応の上昇を認めた。CT所見では胆嚢は著明に腫大しており、壁の肥厚が確認された。また、壊死および穿孔により漿膜下に膿瘍を形成している可能性が考えられた。以上より、汎発性腹膜炎(壊死性胆嚢炎疑い)として、直ちに開腹胆嚢摘出術を施行した。胆嚢は360度の回転を認めており、完全型の胆嚢捻転症による汎発性腹膜炎であった。治療として捻転を解除し、胆嚢摘出術を施行した。以後、患者は経過順調である。胆嚢捻転症は、特異的な症状に乏しく比較的まれな疾患であり、術前診断が困難な症例の1つである。その一方で、捻転による壊死性変化が急速に進む場合もあり、治療は緊急を要する。今回我々は、早期に胆嚢摘出術を施行し術後経過良好な胆嚢捻転症の1例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。