日本消化器内視鏡学会甲信越支部

33.肝門部胆管癌と術前診断されたIgG4関連硬化性胆管炎の一例

信州大学 医学部 消化器内科
金井 圭太、浜野 英明、高山 真理、丸山 雅史、児玉 亮、張 淑美、尾崎 弥生、新倉 則和、田中 榮司
信州大学 医学部 消化器外科
吉澤 一喜、秋田 真吾、鈴木 史恭、横山 隆秀、中田 岳成、小林 聡、三輪 史郎、宮川 眞一
市立大町総合病院 外
山本 浩二、窪田 晃治、高木 哲

【目的】IgG4関連硬化性胆管炎は自己免疫性膵炎に合併する硬化性胆管炎であるが,特に自己免疫性膵炎として典型的な膵病変を認めない(狭義の)IgG4関連硬化性胆管炎は診断に難渋することが多い.肝門部胆管癌と診断され,術後に診断し得た(狭義の)IgG4関連硬化性胆管炎を報告する.

【症例】83歳男性.褐色尿を自覚し受診した.総ビリルビンと胆道系酵素の上昇を認め,CT,MRI, ERCでは両側の肝内胆管拡張,上部から肝門部に及ぶ胆管狭窄を認めた.膵には異常所見を認めなかった.胆管生検を3回施行するも,悪性所見は得られなかったが,FDG-PETでは肝門部に一致して集積を認めた.肝門部胆管癌に合致する所見であり,経皮経肝門脈塞栓術施行後,肝拡大右葉切除術を施行した.切除標本の病理学的検索では腫瘍細胞は認めず,胆管壁全層にリンパ球・形質細胞主体の著明な炎症細胞浸潤を伴う繊維性の肥厚を認めた.IgGサブクラス免疫染色ではIgG4陽性形質細胞の多数浸潤を認め,閉塞性静脈炎の所見もみられた.以上より(狭義の)IgG4関連硬化性胆管炎と診断した.術後測定した血清IgG4は252 mg/dlと高値であった.

【考察】本例は胆管生検で悪性所見が得られなかったが,IgG4関連硬化性胆管炎の可能性を考慮できず,血清IgG4測定や胆管生検におけるIgGサブクラス免疫染色を施行しなかった.これまで当施設では本例も含めて自己免疫性膵炎として典型的な膵病変を認めない(狭義の)IgG4関連硬化性胆管炎を9例経験しているが,そのうち4例は当初肝門部胆管癌と診断された.後ろ向き検討でも本例の画像所見は肝門部胆管癌に合致しており,(狭義の)IgG4関連硬化性胆管炎は肝門部胆管癌と極めて鑑別が難しいと考えられた.

【結論】肝門部胆管癌が疑われ胆管生検にて腫瘍細胞を認めないときには,IgG4関連硬化性胆管炎の可能性も考慮し,血清IgG4測定とIgGサブクラス免疫染色を施行する必要がある.