日本消化器内視鏡学会甲信越支部

32.胃癌、尿管癌、大腸癌術後、脳神経膠腫治療中に肝門部胆管癌を切除した1例

新潟県立吉田病院 内科
中村 厚夫、水野 研一、八木 一芳、関根 厚雄
新潟県立吉田病院 外科
岡本 春彦、小野 一之、田宮 洋一

67歳男性、既往に50歳時胃癌にて胃切除、59歳時左尿管癌にて左腎摘出術、60歳時S状結腸癌にてS状結腸切除術を行っている。2007年他院にて5cmの脳神経膠腫を認め放射線治療、その後抗腫瘍薬による治療中、腹部CTにて左肝内胆管の拡張を認め2008年7月当科紹介入院となる。腹部エコーではS4に16x15mmの低エコー腫瘤を認め左肝内胆管が軽度に拡張していた。腹部CTでは腫瘍ははっきりせず左肝内胆管の拡張より左肝管内の腫瘍性病が疑われた。ERCPでは左肝管は描出されず胆管癌を疑った。IDUSは左肝管にプローブが入らないため右肝管から行ったところ腫瘍性病変は総胆管内に発育しているようにも見えた、左肝管の外側高エコーが断裂していた。ENBDを留置、2回行った造影では透亮像の大きさが違い腫瘍からの出血と診断した。IDUSで見えた所見は一部は凝血塊を見ていた可能性も疑われた。胆汁細胞診はclassIIであったがIDUSの所見より肝門部胆管癌と診断し肝左葉切除術を行った。病理診断は胆管癌(Bl)、平坦膨張型、15x15mm、高分化管状腺癌>粘液癌、ly0、v0、pn0、深達度ss、リンパ節転移は認めなかった。ERCP、ENBD造影の形態変化は粘液癌の影響であった可能性も考えられた。また5つの重複悪性腫瘍を認めた肝門部胆管癌の切除例は貴重と考え報告する。