日本消化器内視鏡学会甲信越支部

31.胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)(上皮内癌)の一例

長野市民病院
彦坂 吉興

胆管内乳頭状腫瘍(IPNB)(上皮内癌)の一例長野市民病院消化器内科1)、同 消化器外科2)、同 臨床病理科3)彦坂 吉興、多田井 敏冶、須澤 兼一、立岩 伸之、越知 泰英、原 悦雄、長谷部 修、1)、林 賢、関 仁誌、宗像 康博2)、保坂典子3)症例は76才、男性。近医にて境界型糖尿病で加療中。平成21年5月肝機能障害を認め、腹部CTを施行したところ肝内胆管拡張を認め、当科紹介となる。腹部US・CT・MRIでは肝尾状葉に4cm大の多房状嚢胞性病変を認めた。大小分葉状の嚢胞は総肝管と連続していたが、内部に充実性腫瘍は認めなかった。ERCPでは主乳頭の開大は認めなかったが、総胆管内に粘液を認め、肝内胆管枝およびB1嚢胞の抽出は不良であった。IDUSでは右肝動脈分岐部まで不均一な壁肥厚を認めた。経口胆道鏡(POCS)では嚢胞内の胆管粘膜は萎縮しており嚢胞内には低乳頭状の隆起性病変を認め、右後区域+B1分岐部まで腫瘍進展を認めた。細胞診、生検ではClass 3どまりであった。以上より尾状葉原発の粘液産生胆管内乳頭状腫瘍(腺種〜非浸潤癌)と診断しH21年8月3日外科手術を施行した。術式は年齢、腫瘍の悪性度を考えて肝拡大後区域+肝S1全切除を選択した。病理組織学的には胆管内を乳頭状、絨毛状に増生する上皮内癌であり、卵巣様間質は認めなかった。また腫瘍は胆管切除断端まで進展していた。IPNBは通常の胆管癌と異なり、slow growingな腫瘍と考えられてるが、表層拡大進展を伴う頻度が高いことから詳細な術前進展度診断が重要である。また術式選択にあったては年齢、腫瘍の悪性度を考えた至適術式が望まれる。今回当科で経験した高齢者IPNBの術前画像診断、外科術式の選択、病理組織学的特徴を中心に報告する。