日本消化器内視鏡学会甲信越支部

28.カンピロバクター腸炎の内視鏡的特徴

佐久総合病院胃腸科
桑山 泰治、堀田 欣一、小山 恒男、宮田 佳典、友利 彰寿、高橋 亜紀子、北村 陽子、篠原 知明、福島 豊実、野村 祐介、岸埜 高明

カンピロバクター腸炎(Campylobacter colitis:CC)は急性下痢症の主要な原因疾患のひとつだが、急性期に内視鏡検査を施行する機会は少ない。本検討では当院にてTCSを施行したCC症例の内視鏡像を元に、その内視鏡像の特徴を検討した。[方法]2003年1月から2008年1月の間に、便及び腸洗浄液による培養でCampylobacter jejuniが検出された症例のうち、大腸内視鏡検査を施行された13例の内視鏡的像を再検討し、内視鏡像の特徴を分析した。[結果]1.内視鏡所見:潰瘍75.0%、発赤69.2%、浮腫46.2%、血管透見低下38.5%、びらん38.5%、粘膜粗造30.8%、膿付着30.8%、黒褐色斑23.1%、易出血性15.4%、連続・びまん性病変7.7%だった。 2.病変の分布:潰瘍は全て回盲弁上であった。その他の所見の分布には有意な所見は認められなかった。3.内視鏡的診断困難例:13例中2例は初回内視鏡にて潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis:UC)と診断された。うち1例は全大腸に粘膜粗造、発赤、びらんを認め、回盲弁上潰瘍は認められなかった。本例ではS状結腸に血管透見が残存する正常粘膜が残存しており、内視鏡所見の見直しにおいてUCを否定することは可能であった。2例目はS状結腸までの観察で、直腸からびまん性に粘膜粗造、発赤、びらん、血管透見消失などの所見を認め、UCと鑑別が困難であった。[結語]CCの75%に回盲弁上の潰瘍を認め、CCに特徴的な内視鏡像と思われた。UCとの鑑別を行うためには全結腸の観察が必要と思われた。連続・びまん性病変を呈した症例は13例中1例(7.7%)と少なく、直腸から連続・びまん性の炎症所見はUCとの鑑別に有用な所見と考えられた。内視鏡的にUCと鑑別が困難な場合は十分な問診、便培養、便中吸引培養、および生検診断を組め合わせて診断精度を上げる工夫が重要であると考えられた。