日本消化器内視鏡学会甲信越支部

27.プロトンポンプ阻害剤内服中に発症したCollagenous colitisの1例

新潟市民病院 消化器科
濱 勇、古川 浩一、林 雅博、河久 順志、相場 恒男、米山 靖、和栗 暢生、杉村 一仁、五十嵐 健太郎、月岡 恵
新潟市民病院 病理科
橋立 英樹、渋谷 宏行

【はじめに】Collagenous colitisは慢性の水様性下痢を主徴とし,大腸粘膜上皮直下にcollagen bandの肥厚を認める疾患である.近年、一部のプロトンポンプ阻害薬(PPI)や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の関与が報告されている.今回我々は逆流性食道炎の治療を目的にlansoprazoleを内服中に発症したcollagenous colitisを経験したので報告する.【症例】70歳代の女性.逆流性食道炎のためlansoprazol 15mg/日の内服を下痢発症の1年以上前より開始.2008年8月頃より3〜4行/日の水様下痢が出現し,前医で上部消化管内視鏡検査,下部消化管内視鏡検査(CF)を施行されたが,明らかな異常を指摘されず整腸剤,止痢剤にて内服治療を継続.2009年1月,症状の改善がないため当院を紹介となる.整腸剤の変更にて症状の改善が一時みられたものの,症状は再燃,顔面・下肢の浮腫が出現,低蛋白血症もあり入院精査加療となる.入院時のCFではS状結腸に数条の縦走瘢痕を認め,生検組織にて表皮直下のcollagen bandが10μ以上に肥厚しており,collagenous colitisと診断.入院4日前よりlansoprazolの内服を中止し,入院後より下痢は速やかに改善し,退院時には浮腫は消失し,低蛋白血症は改善した. 3ヶ月後のCFでは,生検組織にてcollagen bandの菲薄化が確認された.【結語】低蛋白血症をきたす高度な慢性下痢を呈したcollagenous colitisを経験した.Lansoprazolの休止により症状の速やかな改善とcollagen bandの可逆的な菲薄化が確認され,示唆に富む症例と考えられ報告する.