日本消化器内視鏡学会甲信越支部

25.当院の虚血性腸炎に関する検討

諏訪赤十字病院 消化器科
木村 岳史、進士 明宏、小松 健一、太田 裕志、武川 建二、山村 伸吉、小口 寿夫
信州大学附属病院 消化器内科
梅村 武司

 【目的】虚血性腸炎は日常診療でしばしば遭遇する疾患である。高血圧、糖尿病などの基礎疾患を有する高齢者に多いとされているが、近年基礎疾患のない若年者にも発症する事が報告されている。今回、当院における虚血性腸炎の臨床像について検討した。【方法】2003年5月から2009年8月まで当科で大腸内視鏡検査も施行された上で虚血性腸炎と診断され入院加療を受けた80例(男31例、女49例)を対象とした。60歳未満を若年者群(36例)、60歳以上を高齢者群(44例)と2群に分類し、性別、臨床症状、生活歴、基礎疾患について比較検討した。【結果】平均年齢は57.54±17.56歳、最年少20歳、最高齢は89歳であり、60歳台にピークがあったが従来の報告よりも60歳未満の若年者の発症例の割合も多かった。男女比は若年者群では男性に、高齢者群では女性に多かった(p=0.02)。入院期間は高齢者群で長かった(p=0.012)。症状は両群で差はなかった。高齢者群で狭窄型が1例見られた以外は全て一過性型であり壊死型は見られなかった。喫煙歴を有する例が若年者群で多く(p<0.001)、なかでも男性例が多かった(p=0.01)。基礎疾患として高血圧(p=0.004)、高脂血症(p=0.004)、糖尿病(p=0.031)、腹部手術歴(p=0.017)が有意差をもって高齢者群で多かった。心房細動、虚血性心疾患については両群で差は見られなかった。便秘は全体の59.5%と高率に合併していたが両群で差はなかった。【考案】若年者群では喫煙歴のある男性が多い一方、高齢者群では女性が多く、高血圧、高脂血症、糖尿病、腹部手術歴といった基礎疾患の合併が目立ち、若年者群と高齢者群では発症までの過程が異なると考えられた。