日本消化器内視鏡学会甲信越支部

24.若年のB型肝炎合併クローン病に対しエンテカビルを併用しインフリキシマブ投与を施行した一例

山梨大学医学部付属病院 第一内科
広瀬 純穂、大塚 博之、井上 泰輔、松井 啓、門倉 信、高野 伸一、深澤 光晴、山口 達也、植竹 智義、大高 雅彦、佐藤 公、榎本 信幸

 症例は18歳男性。6か月前より体重減少、1日5〜6行の下痢、肛門部痛を認め、近医で痔瘻に対し切開開放術を施行後、紹介入院となった。入院時肛門に痔瘻を認め、下部消化管内視鏡検査では回盲弁口側に縦走潰瘍、上部消化管内視鏡検査では胃・十二指腸球部前壁にびらんの散在を認めた。ダブルバルーン小腸内視鏡検査では回腸に縦走潰瘍・cobble stoneの存在を認めた。小腸型クローン病と診断した。CDAIは124、IOIBDは2であった。一方、HBsAg(++)、HBeAb(++)、AST36、ALT35、HBV-DNA(++)であった。若年でもあり、抗ウイルス薬の適応判断の為肝生検を行った。その結果はF1/A1門脈域に炎症を伴う慢性肝炎を認めた。痔瘻を合併する小腸クローン病、同時にB型慢性肝炎と診断し、エンテカビルとインフリキシマブの投与を行うこととした。インフリキシマルブの投与を開始した。クローン病は寛解し、HBVDNA量は1.8未満で推移している。B型肝炎診療ガイドラインにより、免疫療法・化学療法にはB型肝炎が増悪することがあることから、核酸アナログ製剤の投与を行うことが推奨されている。しかし本例は18歳という若年であったため、肝生検により肝炎を確定して抗ウイルス薬を投与した。今回若年のB型肝炎合併クローン病に対しエンテカビルを併用しインフレキシマブ投与を施行した一例を経験したので報告する。