日本消化器内視鏡学会甲信越支部

23.ヒルシュスプルング病根治術後の残存大腸に潰瘍性大腸炎を合併した一例

新潟県立吉田病院
水野 研一、中村 厚夫、八木 一芳、関根 厚雄

 症例は29歳男性。既往歴としてヒルシュスプルング病にて2歳時に根治術を施行されS状結腸〜上行結腸を切除されている。幼少期より下痢傾向あり最近でも4-6回/日程度の排便回数であった。1年前に便に血液が混入していることを自覚していたが自然に軽快した。1ヶ月前より、下痢回数の増加(10-15回/日)を認めたため近医を受診。下部内視鏡にて大腸粘膜の血管透見性の低下と浮腫、粘血膿性分泌物付着、易出血性(接触出血)を認めたため潰瘍性大腸炎(UC)疑いにて当科紹介となった。入院時、15-20回/日の下痢と顕血便、発熱(37.7℃)を認めておりメサラジン(4000mg/日)内服と白血球除去療法(LCAP療法)を開始した。加療開始に伴い下痢回数も5回/日程度まで減少し、血便もほとんど見られなくなった。LCAP療法を4回終了後、内視鏡的に改善していることを確認した。また罹患範囲は盲腸まで及んでいるも残存大腸の長さが約25cmと非常に短いことが確認された。恒常的に下痢傾向であることからメサラジンの停滞を考慮し注腸に切り替えた。LCAP療法終了後、注腸療法にて症状の増悪ないことを確認し退院した。 ヒルシュスプルング病根治術後の残存大腸に合併した潰瘍性大腸炎の報告は稀であり、興味深い症例であったため、若干の文献的考察を加えて報告する。