日本消化器内視鏡学会甲信越支部

22.好酸球性肺炎の治療後に潰瘍性大腸炎を発症した一例

下越病院 消化器科
入月 聡、原田 学、河内 邦裕、山川 良一
新潟大学大学院医歯学総合研究科 分子・診断病理
味岡 洋一

【症例】43歳女性【現病歴】1998年より気管支喘息にて当院呼吸器科に通院していた。2008年9月健診の胸部レントゲンにて左上肺野に浸潤影を認め、血液検査で好酸球の上昇を認めた。好酸球性肺炎として外来でプレドニゾロン内服にて治療を行い、胸部の浸潤影は軽快した。プレドニゾロンを徐々に減量し、2009年6月下旬に中止した。7月上旬より下痢、血便出現し徐々に増悪がみられた。7月28日大腸内視鏡検査を行い、潰瘍性大腸炎を疑われ、7月29日精査加療目的に入院した。【主な入院時現症】血圧96/55mmHg、脈拍80/分、体温37.3度。腹部平坦、軟、腸蠕動音亢進、臍下部に圧痛あり。排便回数7-8回/日、顕血便。【主要な検査所見】赤血球数 465万/mm2、Hb 13.1g/dl、白血球数 8000/mm2(好酸球数1.0%)、赤沈 34mm/h、CRP 6.35mg/dl、総蛋白6.8g/dl、アルブミン3.9g/dl。大腸内視鏡検査:盲腸〜横行結腸右側に強い浮腫・うっ血・びらん・潰瘍・血管透見像の消失、横行結腸左側〜S状結腸にびらん散在、直腸に発赤・びらん・血管透見像の消失あり。病理組織学的に活動期潰瘍性大腸炎として矛盾しない所見。注腸造影:上行結腸から横行結腸にかけて連続性にびらん、母指圧痕像あり。横行結腸から下行結腸にかけて多発するアフタ様の所見あり。直腸には連続性にびらんあり。胸部X線写真:異常なし。【入院後経過】以上より潰瘍性大腸炎中等症、全大腸炎型と診断し、禁食・輸液の上、メサラジン4g/日にて治療を開始した。頻回の血便、高熱が続いたため、プレドニゾロン60mg点滴静注と白血球除去療法を加え寛解に至った。9月7日退院し、現在外来にてプレドニゾロンの減量を行っている。【考察】潰瘍性大腸炎は主として粘膜を侵し、しばしばびらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明のびまん性非特異性炎症であり、何らかの免疫の異常が発症と炎症の持続に関与していると考えられている。今回われわれは好酸球性肺炎に対しステロイド治療を行い、ステロイド中止後に潰瘍性大腸炎を発症した症例を経験したので、文献的考察を加え報告する。