日本消化器内視鏡学会甲信越支部

18.虫垂カルチノイドの2例

長野県立木曽病院 外科
小山 佳紀、大橋 伸朗、久米田 茂喜
長野県立木曽病院 内科
奥原 禎久、北原 桂、飯島 章博
信州大学医学部 病理学教室
下条 久志

 【症例1】35歳男性。下腹部痛を主訴に受診。腹膜刺激症状あり。WBC 15440/μl、CRP23.5mg/dlと炎症反応高値。腹部CT、超音波にて腫大した虫垂を認め急性虫垂炎と診断し、虫垂切除術を施行。蜂窩織炎性で一部に壊疽性の部分を伴う虫垂炎の所見であり、腫瘍性病変は肉眼的には明らかではなかった。病理学的検査にて虫垂断端から13mmの部位の粘膜下組織に、胞巣状あるいは一部腺管様構造を伴う径4mmのカルチノイドを認めた。【症例2】77歳男性。右腹部痛を主訴に受診。腹膜刺激症状あり。WBC 13170/μl、CRP 3.85mg/dl。腹部CTにて糞石を伴った腫大した虫垂を認め急性虫垂炎と診断し、虫垂切除術を施行。(症例1と同様に)蜂窩織炎性で一部に壊疽性の部分を伴う虫垂炎の所見であり、腫瘍性病変は肉眼的には明らかではなかった。病理学的検査にて虫垂末梢の粘膜下組織に、類円形核を持つ多角形の細胞が大小の胞巣状に増殖する像からなる径3mmのカルチノイドを認めた。虫垂カルチノイドは消化管カルチノイドの中で10%前後を占め、自験例のように急性虫垂炎の診断で手術した際に、病理組織診断にて偶発的に診断される症例が少なくない。若干の文献的考察を加え報告する。