症例は、40歳代の男性。2008年10月の人間ドックの大腸鏡検査でS状結腸に粘膜下腫瘍を指摘されため、同年12月当院紹介。2009年1月の当院の大腸鏡検査では、S状結腸に表面が平滑で陥凹をを有しない黄色調隆起性病変を認めた。超音波内視鏡検査では粘膜下層までのほぼ均一な低エコー腫瘤として描出され、腫瘍径は5mmであった。胸部から骨盤CT検査ではリンパ節腫大、造影されるリンパ節は存在せず、転移は認めなかった。以上より内視鏡的切除術の適応病変と診断し、4月に内視鏡的粘膜下層剥離術を施行した。病理組織学的検索では、腫瘍径は6mm大のsynaptophysin陽性、chromogranin A 陰性のカルチノイド腫瘍であった。切除標本内に同病変とは離れてカルチノイド腫瘍が存在し、切除断端近傍まで及んでいたため外科的追加切除の適応と考え7月S状結腸切除術、D2郭清を施行した。追加切除したS状結腸には腫瘍の遺残は認めなられなかったが提出した5個のリンパ節中1個に転移を認めた。その後退院し現在外来通院中である。
10mm以下で粘膜下層までのカルチノイド腫瘍は、一般的に内視鏡的切除の適応病変とされる。本症例の術前診断では、転移の危険因子とされる陥凹はなく、また超音波内視鏡像も均一であり、内視鏡切除の適応病変であった。しかし切除標本の検討で主病変とは別に同一標本内に別病変が存在していた。この別病変が脈管侵襲なのか現在特殊染色にて検討中である。以上、6mmのリンパ節転移を呈したS状結腸カルチノイド腫瘍を経験したので、文献的考察を加えて報告する。