日本消化器内視鏡学会甲信越支部

16.白血病細胞の腸管浸潤により終末回腸及び大腸にび慢性多発性潰瘍形成を来した1例

新潟県立
青木 洋平、本間 照、夏井 正明、神田 真由紀、松澤 純、姉崎 一弥、杉山 幹也、渡辺 雅史
新潟大学
味岡 洋一

 症例は50歳代の男性。微熱、下痢が出現し近医受診、末梢血に骨髄芽球を認め、当院血液内科へ紹介された。WBC6800(M-bl 12.5, mye 1.0, met 1.0, st13.0, seg7.0, lym 25.0, mo 3.5, eo 1.5, A-ly 1.5, Ebl 1.0)。骨髄像では前骨髄球が多いが、急性白血病とは診断できず、重症感染症に伴うleukoerythroblstosisが疑われた。便・血液培養では特異的病原体を検出できなかった。抗生剤TFLXを投与したが発熱は増悪、水様下痢>2000ml/日となり脱水、血圧低下もあり、mPSL、ドパミン等を使用した。mPSL投与後解熱、水様下痢は消退した。CFでは終末回腸、全大腸に多発する潰瘍を認めた。介在粘膜が浮腫状のせいか潰瘍は辺縁境界明瞭で深掘れ傾向を示した。上行結腸に特に多発している以外、分布に規則性は見られなかった。内視鏡的には介在粘膜に発赤、びらんを認めず、潰瘍性大腸炎(UC)とは診断できなかったが、組織学的には慢性活動性炎症細胞侵潤がび慢性にみられ、UCに矛盾しない所見であった。その後再び40℃の発熱、大量の水様下痢を来すようになった。PSL再投与すると翌日から解熱したため、UCに準じて治療を行った。便も泥状〜粘液便5行/日前後で落ち着いていた。PSLを漸減し20mgとした翌日、再び39℃台に発熱した。CMV antigenemia陽性となったためGCV投与し、PSLも増量した。しかし突然、大量下血を来し輸血が必要となった。内科的に治療継続は不可能と判断し、外科的に大腸切除術を行った。切除標本の組織学的検討では、小型リンパ球の3倍程度でクロマチンの増量した単核球が粘膜下層を中心に腸管壁全層に浸潤していた。骨髄単球系白血病細胞と診断された。内視鏡下生検では粘膜固有層しか採取されておらず白血病細胞の浸潤が確認できなかったものと考えられた。