日本消化器内視鏡学会甲信越支部

12.NBI拡大観察が深達度診断に有用であった,LSTの形態を呈した早期結腸癌の1例

長野中央病院消化器内科
太島 丈洋、田代 興一、松村 真生子、木下 幾晴、小島 英吾
長野中央病院病理科
大野 順弘

大腸腫瘍の微小血管構造をNBIにて拡大観察することが,組織異型度・癌の深達度診断に有用であることが多施設から報告されている.今回NBI拡大観察が,染色法によるpit pattern診断よりも診断に有用であった大腸腫瘍の1例を経験したので報告する.症例は80歳男性.過去に下行結腸癌・直腸癌の開腹手術の既往がある.2009年6月10日定期検査の下部消化管内視鏡検査で横行結腸に5mmのIspポリープを指摘され,6月17日にポリペクトミーを施行した.その際に上行結腸に前回指摘されなかった,発赤調で一部隆起を伴う25mm大のIIa病変(LST-NG-F)を認めた.色素拡大観察にて平坦部は不整形のIIIL型pit pattern,皺壁集中を伴った隆起部分では可視範囲はIIIS型pit patternであったが,粘液付着のため詳細なpit pattern診断は困難であった.NBI拡大観察では,同部位で太さ・分布が不均一な血管による不整な網目模様を認め,間接的にpit構造は観察困難であった(広島大学分類C2〜C3).また平坦部分では太さ・分布が比較的均一な微小血管による不整な網目模様を認め,間接的に不整なpit構造が観察可能であった(広島大学分類C1).以上より,深達度SM massiveの腺腫内癌と診断し開腹手術を施行した.最終病理組織診断はwell>moderately differentiated tubular adenocarcinoma,type0-IIa, 25x20mm, pSM(1200μm),INFb,ly0,v0,pN0(0/7),pPM0,pDM0で,腺腫と判断した平坦部分も癌腺管より形成されており,病変全体が癌であった.発表では大腸腫瘍に対するNBI拡大観察のデータを含めて報告する.