日本消化器内視鏡学会甲信越支部

11.大腸腺腫発見率の比較 ―透明可動式フードを使用した大腸内視鏡検査 vs. Narrow Band Imagingを使用した大腸内視鏡検査

昭和伊南総合病院 消化器病センター
堀内 朗、中山 佳子、梶山 雅史、一瀬 泰之、上島 哲哉、加藤 尚之

【目的】大腸内視鏡検査は、大腸癌あるいは大腸ポリープのスクリーニング法として、最も有用な検査法ではあるが、近年、この検査法がもつ潜在的な見逃しの問題が指摘されている。大腸内視鏡検査の精度向上を目指して、我々はこれまで透明可動式フード(TRE)を使用した大腸内視鏡検査法の有用性について報告してきた(Am J Gastroenterol 103: 341-345, 2008)。一方、日本を中心にNarrow Band Imaging (NBI)を使用した大腸内視鏡検査の有用性が報告されている。今回、大腸腺腫発見率において、 TREを使用した大腸内視鏡検査とNBIを使用した大腸内視鏡検査を比較検討した。【方法】対象は、2007年1月より2008年8月の期間にTREおよびNBIを使用しない大腸内視鏡検査で発見された腺腫をもつ患者107名をTREか NBIいずれかを使用した大腸内視鏡検査群に無作為に振り分け、両群において発見された腺腫の数、サイズ、形状、腺腫の位置について検討した。腺腫の除去は、2回目の検査のみで行なわれた。また、今回の検討では、全例、プロポフォール鎮静下でオリンパス社製硬度可変式大腸スコープPCF-Q260AIを使用した。 【成績】107例の患者は、TRE群N= 54、NBI群N = 53。TRE群およびNBI群間に、年齢、性、終末回腸挿入率、盲腸到達時間および盲腸到達率における有意差はなかった。TRE群では NBI群に比べ、大腸腺腫の発見数は有意に増加した。(31% vs. 5%, P<0.0001)。検査時間は、発見された腺腫の数の影響でTRE群の方がNBI群に比べて有意に長かった(25分 vs. 21 分, P=0.04)。また、NBI群では、1回目の検査で発見された3腺腫が見逃されていた。この研究期間中、偶発症は1例もなかった。【結論】TREを使用した大腸内視鏡検査の大腸腺腫発見率は、NBIを使用した大腸内視鏡検査より有意に高かった。