日本消化器内視鏡学会甲信越支部

10.魚骨による小腸穿孔の1例

飯田市立病院 外科
池田 義明、平栗 学、秋田 倫幸、堀米 直人、金子 源吾
飯田市立病院 内科
持塚 章芳、中村 喜行
飯田市立病院 臨床病理科
伊藤 信夫
飯田市立病院 放射線診断科
岡庭 優子

 今回我々は、魚骨による小腸穿孔の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。症例:68歳男性。既往歴:2006年大腸憩室炎に対して保存的治療を施行。現病歴:2009年9月某日、起床時から右下腹部痛を自覚し近医を受診。既往歴より大腸憩室炎の再燃疑いにて当院紹介となった。腹部所見は臍周囲から左下腹部に圧痛、反跳痛を認めた。血液検査は白血球7700/μl、CRP9、2mg/dlと炎症反応を認めた。CTを施行したところ左下腹部の小腸壁に魚骨と思われる長さ25mmの線状高吸収域を認め先端の6mmは壁を貫いていた。魚骨による腹膜炎と診断し開腹術を施行。トライツ靱帯より肛門側210cmの小腸に魚骨による穿孔部位を認めた。魚骨を含めた穿孔部を切除し縫合閉鎖した。術後10日目経過良好であり退院となった。考察:今回はCTにより魚骨による小腸穿孔と診断することができた。本症の術前正診率は1990年以前の集計例では5%程度であり術前診断は困難とされていた。しかし近年の集計例はCTによる診断率の高さを示す報告が増えてきている。またMDCTによる魚骨同定率、術前診断率ともに100%と報告があり診断にはCTが有用であると考えた。