今回消化管出血を契機に発見された小腸腫瘍の2例を経験したので、文献的考察を加えて報告する。
症例1は70歳代女性。2009年8月30日大量の血便を認めたため、同日当院救急外来受診となった。来院時血圧106/66mmHg、脈拍110回/分、眼瞼結膜に貧血を認め、腹部所見に特記事項を認めず、直腸診にて鮮血の付着を認めた。血算にてHb 6.3 g/dlであった。同日緊急大腸鏡検査、上部消化管内視鏡検査を実施するも出血源を認めず、経過観察目的に入院となった。同日再度大量の血便を認め、意識消失、ショック状態となったため、緊急造影CT検査施行し、小腸内への多量の造影剤漏出を認め、小腸出血と診断した。輸血を行いながら緊急腹部血管造影検査施行し、上腸間膜動脈造影にて第一枝末端より造影剤の明瞭な漏出を認め、同部位へTAE施行し一時止血を得た。TAE後外科にて開腹手術を実施、空腸に腫瘍を認め、同部を切除した。病理標本では3.5x3.5x3.0 cmのGISTであった。術後経過良好にて退院となった。
症例2は50歳代男性。2009年8月上旬より血性下痢を認め、近医にて感染性腸炎と診断され、抗生剤にて一時改善を認めたが、血便が出現したため9月1日当科紹介となった。血算にてHb 6.5 g/dlであった。9月2日大腸鏡検査実施、終末回腸から直腸まで新鮮血の貯留を認めた。小腸出血を疑い同日腹部造影CT検査を施行し、回腸の拡張、壁肥厚を認め、小腸腫瘍からの出血が疑われた。9月3日腹部血管造影検査施行、上腸間膜動脈造影にて回腸枝末端に蛇行した異常血管と血管外漏出を認め、同部位へTAE施行し一時止血を得た。9月4日外科にて開腹術を実施、回腸に腫瘍を認め、同部を切除した。病理標本では10x5 cmのほぼ全周性の腫瘍を認め、Diffuse large B-cell lymphomaであった。現在入院中であり、今後血液内科で加療予定である。