日本消化器内視鏡学会甲信越支部

5.ダブルバルーン内視鏡(DBE)にて診断されFOLFOX療法が奏効した空腸癌の1例

佐久総合病院 胃腸科
新田 壮平、宮田 佳典、堀田 欣一、北村 陽子、高橋 亜紀子、友利 彰寿、小山 恒男、篠原 知明、國枝 献治、岸埜 高明、野村 祐介、桑山 泰治

 症例は50代、女性。2008年6月より10kgの体重減少と嘔吐を主訴に近医より紹介となった。PSは2。CA19-9: 125U/mlと上昇を認めた。上部消化管内視鏡で十二指腸下行部まで異常は認めなかった。CTにてトライツ靭帯近傍の空腸に造影効果を認める長径40mmの腫瘤性病変を認め、口側小腸の拡張を伴っていた。また、ダグラス窩に長径16mmの腫瘤を認めた。経口アプローチのDBEにて、トライツ靱帯やや肛門側の上部空腸に全周性の凹凸不整な壁肥厚および内腔の狭窄を認めた。病変部に絨毛の腫大、大小不同を認め、周囲の正常との境界は明瞭であった。同部からの生検にて高分化型腺癌と診断した。第16病日に腹腔鏡補助下小腸部分切除術を施行した。術中にダグラス窩転移を認めたため、原発巣の切除のみを施行した。最終病理診断は、空腸癌、Circ, Type3, 40x20mm, tub1>por, T4 (SE) , ly3, v1, N2, H0, P3, M0であった(大腸癌取扱い規約に準じて記載)。手術1ヶ月後、経口摂取は回復しPSは1と改善した。同時期のCTにて最大径10mmの肝転移をS2とS3に各1個、S7とS8に各2個認めた。またダクラス窩転移は軽度増大を認め、第87病日にmFOLFOX6を開始した。4コース後の評価でPRの効果が得られた。Grade 3以上の有害事象として好中球減少を認めた。11コース後にgrade 2の末梢神経障害が持続したため、oxaliplatinを中止した。その後、sLV5FU2を13コース行い、治療開始から14ヶ月経過し、ほぼCRの状態を維持している。 [考察]DBEの普及に伴い、小腸癌診断の機会は増加していくことが予想される。しかし、切除不能・再発小腸癌に対する標準的化学療法は確立していない。本症例の経験から小腸癌に対するFOLFOX療法の有効性が期待される。転移性小腸癌に対する選択肢の一つとして候補に挙がる治療法と考えられた。