日本消化器内視鏡学会甲信越支部

4.長期NSAID使用中、腹痛、嘔吐を契機に発見された小腸潰瘍の1例

県立木曽病院内科
奥原 禎久、渡邉 貴之、北原 桂、飯嶌 章博
県立木曽病院外科
大橋 伸朗、小山 佳紀、久米田 茂喜

 症例は80歳、女性。2002年より腰痛、変形性膝関節症にて当院整形外科でNSAID(ロキソニン180mg/日、ボルタレン50mg/日)の処方を受けていた。2008年11月に腹痛、嘔吐認めたが自然軽快した。2009年6月に腹痛、嘔気を認めたため、EGD、TCS施行したが、異常所見は認めなかった。検査後より腹痛、嘔気が継続したため、当院を受診したところ、腹部レントゲンおよび腹部CTにて小腸イレウス疑われ、同日入院となった。絶飲食、経鼻胃管挿入にて症状改善し、第7病日に経口摂取開始したところ再び腹痛嘔吐認めた。小腸二重造影施行したところ、空腸下部に立ち上がりスムースな狭小化を認めた。バリウムの通過は良好であったため、シングルバルーン小腸内視鏡検査施行し、空腸下部、引き抜き150-160cmに輪状潰瘍と腸管の狭小化を認めた。小腸潰瘍の原因検索として諸検査施行したが、原因となるような結核や、炎症性腸疾患などは否定的であった。その後経口摂取も問題なく、第17病日退院となった。本症例では、長期のNSAID内服歴があり、NSAID起因性の小腸潰瘍の可能性が考えられた。NSAIDは現在広く使用されており、上部消化管はもちろん、下部消化管、特に小腸にも粘膜傷害を来すことが知られている。消化管出血など疑うNSAID長期投与患者において、EGD、TCSにて異常認めない場合、積極的に小腸内視鏡検査を施行すべきと考える。