日本消化器内視鏡学会甲信越支部

3.カプセル内視鏡が停滞し、ダブルバルーン小腸内視鏡にて回収したCrohn病の一例

信州大学 医学部 消化器内科
岩谷 勇吾、伊藤 哲也、米田 傑、丸山 雅史、須藤 桃子、市川 真也、須藤 貴森、武田 龍太郎、高橋 俊晴、長屋 匡信、新倉 則和、田中 榮司
信州大学 医学部 附属病院 内視鏡診療部
竹中 一弘

 今回、我々は原因不明の消化管出血に対しカプセル内視鏡を施行し、停滞を示したカプセル内視鏡(CE)をダブルバルーン小腸内視鏡(DBE)にて回収した症例を経験したので報告する。【症例】43歳、男性【主訴】血便【経過】平成21年7月、血便を主訴に前医を受診した。下部消化管内視鏡、メッケル憩室シンチグラフィーを施行したが出血源不明のため、当院へ紹介された。上部消化管内視鏡では異常なく、腹部CTでは腸管狭窄を示唆する所見を認めなかったためCEを施行したところ、多発する輪状狭窄を認めた。後日小腸二重造影を施行したところCEは下部回腸に停滞し、また他部位に縦走潰瘍瘢痕と多発狭窄を認めCrohn病と診断した。自然排泄は困難と判断し、CE施行後6日目にCEの回収と下部回腸の観察目的で経肛門的DBEを行った。CEに到達するまで5か所の輪状狭窄を認め、順次バルーン拡張を行ってCEを回収した。【結語】原因不明の消化管出血に対しCEは第一選択となりつつある。出血に対する診断能を上げるためには出血のエピソードから可及的速やかにCEを施行したほうがよいとされるが、本例のようにCEの停滞も懸念される。CEの停滞に対しDBEによる回収は有効な手段であるが、緊急性がない症例では小腸造影検査を先行させたほうがよいと考えられた。