日本消化器内視鏡学会甲信越支部

2.当院における小腸カプセル内視鏡の使用経験

昭和伊南総合病院 消化器病センター
上島 哲哉、堀内 朗、中山 佳子、梶山 雅史、一瀬 泰之、加藤 尚之

 【目的】当院における小腸カプセル内視鏡(以下CE)の使用経験を報告する。【方法】対象は、2008年10月より2009年9月までの1年間にCEが施行された32例。男性14例、女性18例、平均 年齢は63.1歳(15−88歳)であった。施行目的は原因不明の消化管出血が30例、消化管ポリポーシスが1例、悪性リンパ腫の病変範囲診断目的が1例であった。2例は、経口摂取困難症例であったため、内視鏡を使用して十二指腸内にカプセルを挿入して開始した。CE施行前日の夕食後に前処置としてマグコロールP1包とラキソベロン1本を用い、使用したCEは、オリンパス社製であった。【成績】大腸到達率は91%(29/32)で胃の平均通過時間は57分、小腸の平均通過時間は294分であった。内視鏡所見は、肺癌の小腸多発転移1例、ポリポーシス1例、非特異的多発性小腸潰瘍1例、悪性リンパ腫1例、びらん3例、出血2例であった。1例は、回腸が食物残渣および胆汁にて読影困難であったため、ダブルバルン小腸鏡(DBE)を経肛門的に挿入して検索したところ、終末回腸に2型の腫瘍を認め、盲腸癌の術後再発と診断された。この期間中、カプセルの体内滞留を含めて、偶発症は1例も起きなかった。【結論】検査前夜の下剤服用にてCEによる全小腸の観察がほぼ可能になることが示唆された。CEで所見を認めた場合、病変が上部小腸か下部小腸か予測できるため、診断確定のためのDBE施行の際にも有用であっ た。