日本消化器内視鏡学会甲信越支部

1.シングルバルーン内視鏡(SBE)が診断に有用であった小腸MALTリンパ腫の1例

長野赤十字病院 消化器内科
今井 隆二郎、宮島 正行、徳竹 康二郎、三枝 久能、藤澤 亨、森 宏光、松田 至晃、和田 秀一、清澤  研道
長野赤十字病院 病理部
渡辺 正秀

 【はじめに】悪性リンパ腫の中で消化管原発は10%程度といわれ、そのうち小腸原発は約30%で、胃の約60%に次いで多い。小腸悪性リンパ腫の組織型や肉眼型は多彩で、近年のバルーン内視鏡の普及により新たな知見が報告されている。今回われわれは、その診断と治療後の効果判定にSBEが有用であった小腸MALTリンパ腫の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。【症例】68歳、男性。高血圧と慢性腎不全で近医通院中。2009年1月上旬より食後の上腹部鈍痛を自覚し、21日当科紹介となり精査加療目的で入院となった。腹部レントゲンで小腸ガスの貯留とCTで小腸壁の肥厚と拡張を認めた。小腸充盈像では上部空腸に約6cmにわたって壁の硬化と内腔の軽度拡張および限局性の蠕動の低下を認めた。二重造影でもその形態は変わらず、皺襞の腫大と蛇行を認めた。経口的SBEを行ったところ粘膜表面に発赤、びらん、一部に凹凸顆粒状結節を伴い、皺襞の腫大による内腔の狭小化を認めた。生検病理では粘膜内及び粘膜下に小型から中型の腫瘍細胞が結節状に増生し、免疫染色ではL26、CD20、Bcl2に陽性で、CD5、CD10、CyclinD1、CD23、Bcl6は陰性で小腸MALTリンパ腫と診断した。PET-CT検査では同部位に強い集積を認めた。骨髄穿刺で腫瘍細胞浸潤を認め臨床病期はLugano国際分類stage4期と診断した。慢性腎不全あるため抗CD20抗体(Rituximab)単独化学療法1コースを行ったところ、術後2ヶ月後のCT,SBEで壁肥厚, 皺襞の縮小を認め、生検で腫瘍細胞は陰性であった。現在再燃なく良好である。【まとめ】小腸悪性リンパ腫の組織型と肉眼型にはある程度の相関が見られるといわれているが、MALTリンパ腫は他の組織型に比べあらゆる肉眼型を呈するため詳細な内視鏡観察と組織診断が求められる。SBEは内視鏡診断、組織診断、範囲診断が可能であり、小腸MALTリンパ腫の診断と治療後の効果判定に対して有用な検査法であった。