日本消化器内視鏡学会甲信越支部

36.潰瘍性大腸炎発症後26年目に発見された直腸隆起型colitic cancerの一例

長野市民病院
彦坂吉興
長野市民病院消化器科
長谷部修、立岩伸之、須澤兼一、越知泰英、多田井敏冶
長野市民病院消化器外科
高田 学、
長野市民病院病理
宗像康博

 症例は70才代男性。昭和57年に全大腸炎型UCと診断され、近医加療中であった。平成20年7月に施行された大腸内視鏡検査で直腸Raに隆起性病変を認め当科紹介となる。通常観察では発赤と褪色が混在した丈の低い隆起性病変で、病変範囲は不明瞭であった。インジゴカルミン散布により病変は明瞭化し、隆起表面は顆粒状〜小結節状を呈していた。拡大内視鏡では管状・絨毛状・小型乳頭状pitを呈する部位とpitが不明瞭な部位が混在していた。NBI拡大観察ではpitが認識できる部位は口径不同の異常血管、pitが不明瞭な部位はcorkscrew様の血管を認めた。超音波内視鏡では第3層の菲薄化を認め、深達度smと診断した。平成20年10月2日腹腔鏡下大腸亜全摘術、肛門管回腸嚢吻合術を施行。病理組織学的にはRa, IIa, 30×30mm,tub2>por2>sig, pSM(2.5mm), INFb, ly2, v1, pPM0, pDM0, pN0, StageI, CurAであった。近年colitic cancerの早期診断の重要性が高まっており、通常観察およびNBI拡大観察所見と病理組織像の対比を中心に報告する。