日本消化器内視鏡学会甲信越支部

35.粘膜切除術3か月後ss浸潤癌へ進展した、大腸鋸歯状病変から発生したと考えられるsm癌の1例

新潟県立新発田病院 内科
青木洋平、本間 照、神田真由紀、松澤 純、夏井 正明、杉山幹也、姉崎一弥、渡辺雅史
新潟大学 分子・診断病理学分野
味岡洋一
鈴木医院
鈴木俊宏
新潟大学 消化器内科学分野
青柳 豊

 症例は80歳代、女性。住民健診で便潜血陽性精査のため、前医で下部消化管内視鏡検査を行った。下行結腸脾弯曲部に、中心に不整陥凹を伴った、みずみずしい印象のある、大きさ約10mmの平坦型隆起性病変を認めた。内視鏡的粘膜切除を行った。病理組織学的所見では、粘膜内部には鋸歯状構造を示す癌pap-tub1が見られ、周囲は異型のある過形成性ポリープで囲まれていた。大腸鋸歯状病変いわゆるSSA/SSPとされる病変の癌化例と考えられた。sm浸潤部で癌はpor2、mucに脱分化しており、脈管侵襲はly1、v0であった。また、簇出が高度に認められた。追加切除目的に当院紹介され、3ヶ月後下部消化管内視鏡検査を行ったところ、脾弯曲部に大きさ約20mmの2型進行癌を認めた。周囲に瘢痕や隆起性病変はみられず、内視鏡治療後の病変が進展したものと考えられた。外科切除標本では癌は最大径18mm、ssへ浸潤していた。3か月というわずかな期間にss浸潤癌へ進展しており、きわめて生物学的悪性度の高い癌と考えられた。頻度が高いわけではないが、大腸癌発生の一つのpathwayとしてSSA/SSP由来の癌も無視できないものと思われる。