日本消化器内視鏡学会甲信越支部

34.右半結腸にdenovo表面型早期癌2病変と直腸に2型進行癌を認めた大腸多発癌の1例

長野中央病院 消化器内科
木下幾晴、小島英吾、松村真生子、三木理加、太島丈洋、田代興一

 症例は76歳男性。残便感と排便回数の増加を主訴に来院された。下部消化管内視鏡検査にて直腸Rbに2型進行癌、横行結腸に3mmの発赤調のIIc病変、肝彎曲部に10mm大のIIa+IIc病変、上行結腸に5mm大のIpとIsポリープを認めた.注腸造影検査では横行結腸のIIc病変は描出されなかった。直腸病変と肝彎曲部病変は外科的に、横行結腸のIIc病変及び上行結腸の隆起性ポリープは外科的手術前に内視鏡的に切除した。術後の病理学的検討では直腸癌(type2,65×45mm,pA), 横行結腸癌(0-I,12×9mm,pSM), 横行結腸癌( type0-IIc,3mm,m)の大腸多発癌と診断した。横行結腸の2病変は癌の辺縁にはadenoma部分がなくdenovo癌と考えられた。上行結腸の隆起型のポリープはserrated polypと診断された。大腸多発癌については各施設より、1)第1癌と第2癌は進行癌と早期癌の組み合わせが多い。2)第1癌の近傍に第2癌が存在する事が多い。3)腺腫性ポリープの並存率が高いなどの特徴が報告されている。本症例は第2、第3癌が第1癌とは離れた右半結腸に存在すること、第2、第3癌はdenovo癌であること、並存するポリープはSerrated polypであることなどが非典型的であり、文献的考察も含め報告する。