日本消化器内視鏡学会甲信越支部

33.悪性腫瘍との鑑別を要した腸管子宮内膜症の1例

新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野・済生会新潟第二病院 消化器内科
今井径卓
済生会新潟第二病院 消化器内科
関 慶一、樋口和男、石川 達、太田宏信、吉田俊明、上村朝輝
済生会新潟第二病院 産婦人科
吉谷徳夫
済生会新潟第二病院 病理検査科
石原法子

【症例】40歳代,女性.【既往歴】2001年に子宮筋腫,右卵巣嚢腫【現病歴】2009年1月末頃より右側腹部痛が出現し,2月に婦人科にて腹部・骨盤部CT検査を施行され,上行結腸に不均一な造影効果を伴う6cm大の腫瘤を認め,後腹膜へ浸潤した大腸癌を疑われたため,精査目的に当科紹介されて入院した.【経過】下部消化管内視鏡検査では,上行結腸に表面平滑で各々が1cm程度の乳頭状ポリープが集蔟した所見を認めた.生検の病理組織検査では,粘膜固有層から一部で粘膜下層に子宮体部内膜間質細胞を認め,腸管子宮内膜症と診断した.2009年3月に子宮内膜症の根治術が施行されたため,腸管病変は経過観察の方針とした.【考察】腸管子宮内膜症の発生頻度は全子宮内膜症の12%で,腸管部位別では直腸・S状結腸72.4%,直腸膣中隔13.5%,小腸7.0%,盲腸3.6%,虫垂3.0%と報告されており,上行結腸子宮内膜症は極めて稀といえる.また,腸管子宮内膜症では診断が得られず腸管切除に至る例もあるが,自験例では内腔に特異な形態で突出していたため生検診断が可能であり,腸管を温存することができた.診断,治療の両面で示唆に富む症例であり,若干の文献的考察を加えて報告する.