症例:41歳、男性。2008年12月25日全身倦怠感を認め、嘔気、冷汗、タール便を認めたため近医を受診。補液、H2ブロッカー、整腸剤、抗生剤を処方され帰宅したが、再度タール便あり当院救急外来受診。来院時血圧120/60mmHg、脈拍98回/分、直腸診でタール便を認めた。上部消化管内視鏡検査では出血源を認ず大腸鏡検査を施行、小腸からの出血が疑われた。入院とし翌日の採血でHb低下は認めなかったため絶食、補液にて経過観察とした。腹部から骨盤部造影CT検査では出血源となりうる病変は指摘できなかった。しかし入院第2病日失神、貧血の進行を認めたため、緊急小腸鏡検査を施行した。経口アプローチで空腸内に鮮血の流出を認め、近傍に露出血管を認めたためクリッピングを施行し止血し得た。輸血は計6単位施行した。その後血液検査所見上貧血の進行はなかった。第13 病日に経口、経肛門アプローチにて小腸鏡検査を実施した。空腸にクリップが残存していたが、他の部位に明かな出血源を認めなかった。第17病日経過良好にて退院となった。
小腸鏡により止血し得た症例報告は少なく、出血部位は露出血管のみからなり興味深い形態を呈していたので、文献的考察を加え報告する。