日本消化器内視鏡学会甲信越支部

29.多量の小腸出血に対しシングルバルーン内視鏡(SBE)による止血術を施行したアレルギー性紫斑病の1例

長野赤十字病院 消化器内科
宮島正行、松田至晃、徳竹康二郎、今井隆二郎、三枝久能、藤沢 亨、森 宏光、和田秀一、清澤研道
長野市民病院 消化器科
原 悦雄

症例は66歳男性。平成20年10月9日腹痛にて某院入院。四肢の皮疹などからアレルギー性紫斑病と診断されプレドニゾロン投与にて改善していた。11月21日著明な倦怠感を自覚し救急車にて当院救急外来を受診。高度の貧血(Hb 3.6g/dl)を認め入院となった。緊急内視鏡にて球後部に露出血管を有する深い潰瘍を認め止血術を施行したが、その後も血便が持続した。第7病日の大腸内視鏡では下行結腸中心に広範な潰瘍を認めるも出血点は明らかでなく、輸血のほかパルス療法、第XIII因子製剤の投与などを行ったが効果は得られなかった。第13病日の出血シンチでは回腸出血の所見が認められたが血管造影では出血点を確認できず、第15病日経肛門的にSBEを施行。回盲弁より80〜100cm口側に露出血管を有する潰瘍を認めclipping施行。一時的な止血効果は得られたもののclipの脱落もあり、以後第20病日、26病日と計3回のSBE下止血術を施行。特に3回目には小腸潰瘍からの噴出性出血を確認しclippingにより止血し得た。しかし34病日よりARDSを合併し42病日永眠された。経過中計86単位の赤血球輸血を必要とした。