日本消化器内視鏡学会甲信越支部

28.内視鏡的切除を施行したinflammatory myofibroblastic tumorの一例

信州大学 医学部附属病院 消化器内科
伊藤哲也、岩谷勇吾、米田 傑、須藤桃子、丸山雅史、長屋匡信、市川真也、武田龍太郎、竹中一弘、高橋俊晴、須藤貴森、田中榮司
信州大学 医学部附属病院 内視鏡診療部
赤松泰次
長野県立木曽病院 消化器内科
北原 桂

 症例は66歳、女性。2008年9月の血液検査で鉄欠乏性貧血を指摘され、10月に某病院を受診した。上下部消化管内視鏡検査では貧血の原因となり得る病変は認められなかった。腹部造影CT検査で小腸に多血性腫瘍性病変を疑われ、精査加療の目的で同年11月5日に当科へ紹介された。経肛門的ダブルバルーン小腸内視鏡(DBE)では回腸に40mm大の亜有茎性ポリープを認めた。鉗子生検で炎症性肉芽組織、反応性の間葉系細胞の増生などが疑われたが、細胞の由来は明らかではなかった。この他には明らかな消化管病変を認めず、同病変が貧血の責任病変であると考え、12月24日に診断的治療目的でDBEを用いて内視鏡的切除術を行った。術後は軽度の腹痛と炎症所見を認めたが、保存的治療にて軽快した。切除標本の病理組織学的所見では紡錘形細胞が密に増殖した腫瘍性領域を認め、inflammatory myofibroblastic tumor(IMT)と診断した。免疫組織染色ではα-SMA(+)、CD34(−)、S-100(−)、c-kit(−)でIMTとして矛盾しない結果であった。IMTは小児から青年期に多く、肺、腸管膜、後腹膜、骨盤腔内に好発する。成人の小腸に発生したIMTは非常に稀であるため若干の文献的考察を加え報告する。