日本消化器内視鏡学会甲信越支部

27.原因不明の消化管出血(OGIB)の原因となりえた小腸リンパ管腫の一例

長野赤十字病院 消化器内科
今井隆二郎、宮島正行、徳竹康二郎、三枝久能、藤澤 亨、森 宏光、松田至晃、和田秀一、清澤研道
長野赤十字病院 病理部
渡辺正秀
長野市民病院 消化器科
原 悦雄

 症例は77歳、男性。2004年よりaf、ASOで抗凝固療法を受けていた。2005年より貧血を指摘され上下部内視鏡検査を施行するも出血源は認めなかった。2009年1月に動悸を主訴に当院外来受診し鉄欠乏性貧血(Hb 5.0 g/dl)を認めた。免疫学的便潜血反応は陽性であったが上下部内視鏡検査、腹部造影CT検査では明らかな出血病変は認めなかった。カプセル内視鏡(CE)で空腸に出血所見を認めたため、経口的にシングルバルーン内視鏡を施行したところTreitz靭帯より50cm肛門側に白色顆粒を呈する8mm程のSMTを認めた。その肛門側縁に約1mmの発赤点あり間欠的な湧出性出血を認めたため治療診断目的にEMRを行った。切除病理所見では粘膜深層と筋板に拡張したリンパ管が密在し、一部に拡張した血管を認めた。以上より小腸リンパ管腫からの出血と診断した。術後便潜血反応は陰性化し、現在まで貧血の進行は認めていない。小腸リンパ管腫については臨床的意義は乏しいと考えられていたが、本例ではOGIBの原因と考えられ、内視鏡的治療が有効であったという意味で極めて示唆に富む症例であり若干の文献的考察を加えて報告する。