日本消化器内視鏡学会甲信越支部

25.仮性嚢胞にて発症した膵腺房細胞癌の一例

飯田市立病院 内科
白簱久美子、岡庭信司、持塚章芳、金子靖典、中村喜行
飯田市立病院 外科
平栗 学、堀米直人、
飯田市立病院 病理診断科
金子源吾

 症例は70代男性。左下腹部痛と心窩部の圧迫感にて近医を受診した。身体所見では心窩部に軟らかい腫瘤を触知した。超音波では膵体部に高エコーの充実性腫瘤像とその尾側にデブリを伴う嚢胞形成を認めた。CTにても膵体尾部を占居する巨大な嚢胞性腫瘤を認め、内腔には造影効果を認める充実成分を伴っていた。膵管の長軸方向にて作成したMPR像にて体部主膵管は腫瘍により閉塞し尾側に仮性嚢胞を形成していると考えた。経乳頭的嚢胞ドレナージのため膵管造影を行ったところ、頭体移行部の主膵管は蟹の爪状に閉塞していた。狭窄部より深部にカテーテルを挿入し造影すると主膵管内に複数のdefectがありその尾側に嚢胞形成を認めた。嚢胞液は膿性でアミラーゼが105370IU/Lと高値であったことから仮性嚢胞と診断した。膵管内管状腫瘍の診断にて膵体尾部脾合併切除を施行した。腫瘍は大きさ9x8cmであり内部に出血壊死を伴っていた。組織学的に腫瘍細胞は腺房状構造を呈しており、腫瘍細胞の核上部には好酸性顆粒を認めた。特殊染色にてトリプシン・リパーゼ陽性であり、電子顕微鏡にてもzymogen顆粒を認めたことから膵腺房細胞癌と診断した。