日本消化器内視鏡学会甲信越支部

24.1年の経過で自然寛解したgroove pancreatitisの一例

松本協立病院 消化器内科
冨田明彦、芹澤昌史
長野中央病院 消化器内科
小島英吾、松村真生子、木下幾晴

 今回われわれは、約1年の経過で自然寛解したgroove pancreatitisの一例を経験したため報告する。症例は37歳男性で、アルコール摂取は機会飲酒程度の方。平成20年2月に急性膵炎で入院加療を行なった。退院後約1週間程した頃から断続的な腹痛、嘔気嘔吐があり、4月某日に再入院となった。精査の結果、groove pancreatitisと診断して保存的治療を行い、3ヵ月後に退院となった。その後もgroove pancreatitisの急性増悪で、2回入退院を繰り返したが、十二指腸狭窄部の改善は認められず、経過が長く自然軽快は困難と思われた。手術をお勧めしたが、同意が得られなかったため、その後も保存的加療を行いながら経過観察を行なったところ、初回入院時より約1年後に軽快した。groove pancreatitisは膵頭部と十二指腸下行脚、総胆管に囲まれたgrooveと呼ぶ領域に生じた限局性慢性膵炎であるが、しばしば膵頭部腫瘍との鑑別が問題となる疾患である。保存的治療にて軽快した報告も多数ある一方で、癌を合併していた若年者の報告も最近増えている。本例は、診断及び治療方法に難渋したが、約1年間という長い経過で自然軽快をみた貴重な症例と思われたため、文献的考察をふまえて報告する。