日本消化器内視鏡学会甲信越支部

23.膵管癒合不全を伴い膵癌との鑑別に苦慮した自己免疫性膵炎の一例

新潟大学大学院医歯学総合研究科 消化器内科学分野
冨樫忠之、高橋弘道、青柳 豊
新潟大学医歯学総合病院 光学医療診療部
塩路和彦、成澤林太郎

 膵管癒合不全を伴い膵癌との鑑別に苦慮したAIPの一例を経験したので報告する。症例は40歳代の男性。嘔気、腹痛の精査のため前医受診。膵癌と考えられたがセカンドオピニオン目的に当院紹介。血液検査ではアミラーゼとIgG4の軽度上昇が認められた。CTで膵はびまん性に腫大し、早期相で膵頭〜鉤部に境界不明瞭な造影不良域を認めた。主乳頭からの造影はできず、副乳頭造影を施行。頭部膵管に限局性狭窄と尾側膵管の軽度拡張を認めた。EUSでは頭部に境界不明瞭な低エコー領域があり、総胆管は全長に渡り壁肥厚を認め、膵癌よりはAIPを第一に考えた。頭部低エコー領域に対しEUS-FNAを施行したところ悪性所見を認めずAIPと診断し経過観察した。6ヵ月後のCTにて脾門部に仮性嚢胞と脾静脈狭小化による脾腫が出現。ERPでは主膵管の狭窄が尾側にも拡大しており、AIPに典型的な膵管像となっていた。ステロイドの内服を開始したところ、主膵管の狭細像は改善し、腹部CTでも膵腫大の軽減と仮性嚢胞の縮小が確認できたが、脾腫の改善は見られなかった。無症状例に対するステロイド治療の適応についても考えさせられる症例であった。